Kickstarterで投資して音信不通となったプロジェクトの投資金額が返金されるまで
Kickstarterというサイトで、DockmuleというThunderbold Hubを見つけました。 拡張機能が多く、m.2 SSDを内蔵可能。つまり、MacにThunderboldケーブルを一本を繋げるだけでディスプレイもUSBも、電源も、TimeMachine用のSSDも、何でも一本で繋がる夢のようなデバイスでしたので、Back(投資)しました
いままで、Kickstarterでは15回ほどBackをしていますが、今回初めて「ものが届かない(作ってる形跡すらない)プロジェクト」になりました。
これまでも届かなかったことは2度ほどありました。1つは倒産。1つはコロナ禍による年単位での遅延が原因でした。 正確には後者の方は、1年以上予定日から遅れたのち、出荷を開始したようですので(届いていませんが)実質的には今回が2回目の失敗プロジェクトだったことになります。
そもそもKickstarter(クラウドファンディング)とは
クラウドファンディングとは、
- 製品のコンセプトをもとに出資者を募る
- 出資されたお金でプロジェクトを実現する
- プロジェクトの完了の暁には、(出資者は)お礼を受け取る(リワード)
というのが主となります。つまりお金を出したからといって必ずしも商品が届くわけではないですし、商品の受け取りを保証するものでもありません。
これまで失敗したプロジェクトとdockmuleは何が違ったか?
これまでに失敗したプロジェクトは、「物を作る」ところまでは到達していました。 失敗の理由は、「AppleからのMFI認証が降りなかった」とか「半導体が不足していて材料調達に遅延が発生した」とか「遅延の結果、追加コストが必要となり(事実上)破綻した」など、説明がしっかりしていましたので、「リワードがなくても仕方がない」と納得することができました。
一方、今回問題となったdockmuleについては、
- プロジェクト開始後も、開発途中の進捗がない(プロモPVとほぼ同じ内容のみ)
- プロジェクト完了間際に1ヶ月の遅延の連絡後、音信不通となる
- 有志の出資者(Backer)からRefund(返金)騒ぎが大量に出た
という点から、 「あ、これは今までのプロジェクト失敗とは何かが違う」 と感じました。
実際のところ何が起こったか。
Kickstarterのプロジェクトは今も公開されています。 2023年4月19日現在、「5,523 人のバッカーが$905,299プレッジ」しているそうです。日本円で 1億2000万円 のかなり大規模プロジェクトです。
これ、多分ですが、 返金された人の額はカウントされていません。というのも私自身が返金された後、自分のステータスからdockmuleが消えているのです。 額が額なので、正確なところは分かりませんが、多分、返金された人は、バッカーから消えて、プレッジからも消えているんじゃないかなぁ・・・と。 (一人当たり2万円 * 5500人で1.1億なので、計算もまぁ・・・合ってしまう・・のですよね・・・)
Backer(出資者)以外にもオープンに公開されている「コメント」欄は阿鼻叫喚の嵐です。ここ最近は、Kickstarterに対するクレーム等のコメントが目立ちます。
https://www.kickstarter.com/projects/dockmule/dockmule-17-in-1-thunderbolt-super-docking-station
2022年4月3日 出資
M1 Macで利用可能なDockを検討していたところ、ちょうどKickstarterでなかなか良さそうなものが出資を募っていることを確認しました。
Early birds(早期特典)もまだあり、PVにも力が入っており、なによりかなりのバッカーがいることから、ほぼ間違いなくプロジェクトは達成されるだろう、という期待のもと、出資をすることにしました。
2022年4月12日 プロジェクト開始
クラウドファンディングが成立し、プロジェクトが開始されることとなりました。この時点で、バッカーの元には、カード会社の決済が進むこととなります。
この時点では、2022年9月末に発送予定、ということとなっていました。
2022年9月16日 プロジェクト遅延のお知らせ
「スケジュール通りに進んでいる」旨のなんどかのアップデートの後、9月16日に「1ヶ月ほど遅延する」というお知らせがありました。
この時点では、「まぁそういうこともあるな」と気に留めてはいませんでした。
2022年9月28日 プロジェクト遅延のお知らせ(その2)
9月16日の問題は解消しつつあるものの、10月末まで遅延する旨が再度告知されました。
このお知らせを最後にクリエイターは音信不通になります
2022年10月末 異変に気がつく
アップデートがないなぁと、10月最終週は毎日のようにウキウキしながらKickstartのページを確認していました。が、コメント欄がだんだん不穏なコメントが増えていることに気がつきました
曰く
- 請求書を発行してもらったところ住所が出鱈目だった(存在しない住所だった)
- 本来のクリエイターでない人間が8月ごろからアップデートの告知をしている(コメントをみてから確認するとその通りでした)
- 本来のクリエイターは1ヶ月以上(Kickstarterに)ログインしていない
とくに1つ目のコメントは結構ショックを受けたことを覚えています。このコメントが1つや2つではありませんでした。
このコメントが発生してから数日のうちに、カード会社を通じて返金をしてもらうべきというコメントが散見されはじめたことを記憶しています。
2022年10月末~11月頭
クラウドファンディングだし、返金はないだろうなぁ、と思っていました。 が、すぐに、「カード会社を通じて返金をしてもらうべき」というコメントをみて、欧米はそのようなことができるのかという考えから、「ひょっとして国内でもそのような保証はあるのでは・・・?」と思い当たりました。
また、ググったところ、実際にKickstarterで返金を受けた方がおられたようですので、このまま泣き寝入りするよりも、と頑張ってみることにしました。
まずは他の購入者の「連絡が取れなくなっている」旨のコメントにのっかる形で、オープンな場で、返金を要望したい旨をコメントしました。
Kickstarterのコメント欄に記載をすると、「名前」欄にフォーカスを合わせると時間がポップアップで表示されるため、客観的な証拠にもなりました。
ちなみに、返金後にコメント欄に記載していた私のコメントが消されていました。自分で消してはいないので、Kickstarter側で何らかの処理をしている可能性があります。
そもそも「コメント」が1908件に対して、「全部見る」場合が999件で数が合わないのです。たぶん、1908件は実際の数で1000件ほどの投稿は返金されたユーザのコメントを消しているんじゃないかな・・・と思っています。
次に、Kickstarterのアプリ、およびヘルプフォームからの問い合わせです。
- アプリは(1度だけ?)クリエイターに対して、進捗確認のプッシュができる機能
- Kickstarter公式のヘルプフォームには、キャンセルしたい、返金を要望する旨の問い合わせを行いました。
なお、アプリの場合は、自分が操作した旨の履歴や確認ができるUIではなかったので、操作前や操作をする際に、画面のスクショ等を逐一とっておく必要がありました。
公式サイトのヘルプフォームからは2,3日後に、こちらが試した(アプリからプッシュする)方法を案内され、直接作者とコンタクトをとって欲しい旨、また、これ以上の問い合わせには対応しない、旨の回答がありました。
2022年11月中頃
公式サイトと思われるHPも無くなっており、メールも配信不能になっているようでしたので、とりあえず自分が取れるだけの連絡手段はこの時点で全て試したかと思います。
コメント欄もますます阿鼻叫喚の勢いが増してきましたので、このタイミングでカード会社に連絡を取ってみることにしました。
ただ、正直なところ、「よくある質問」に今回の件に合致するようなポイントがなかったので、問い合わせフォーラムから、
「半年以上前に海外サイトで決済した商品が届かない。キャンセルしたいが手続きは可能なのか」という旨の問い合わせを行うことにしました。
翌日
驚いたことに翌日の昼頃、電話にて、詳細の聞き取りの電話がかかってきました。その場で経緯を改めて説明し、クラウドファンディングサイトで難しいかもしれないが対応は可能かを確認してもらうことにしました。
電話では、まずは状況の確認だったようで、こちらの状況を専門の窓口に伝え、その日中に再度聞き取りの電話をいただきました。
「返金対応が可能かわからないが、確認してみる」とのことだったと記憶しています。
2022年12月頃。
「確実に返金対応できるかわからないが、異議申し立てをするための書類を作成してほしい」旨の電話をいただきました。
郵送で書類を送付するので、返送してほしい、返送したからといって確約するものではない、ということでした。
返金を受けた方がおられた方のサイトにもありましたが、
購入した事実が分かる書類
- 商品の名前や画像のコピー
- 注文が成立したことのメールのコピー
購入した事実が分かる書類
- 商品の名前や画像のコピー
- 注文が成立したことのメールのコピー
- 自ら問題解決を試みた証拠
- 問い合わせフォームの内容
- メールの内容のコピー
- 電話で問い合わせた記録(相手、内容、時間)
をWordとExcelでまとめた内容を返送しました。
ある程度心積りがあったので、Kickstarterのサイト、プレッジ確定時のメール、支払い時のメール、問い合わせメールの内容、コメント欄に記載した内容のスクショ(時間入り)を速攻でまとめて翌日には返送した記憶があります。
2023年2月中旬
電話にて、カード会社の方から連絡をいただきました。 「Kickstarter側に交渉したが、(クラウドファンディングのため)商品の到着は100%保証していない」旨の回答をいただいたとのことでした。
Kickstarterへの問い合わせメールの回答と同じような内容でしたし、「ですよねぇ・・・(泣き寝入りか・・」という思いが一瞬生まれたのですが、カード会社の方から「もう一度、挑戦しますか?」という神のような一言がありました。
どうやら、カード会社として、1度までは再リクエストをだせるそうで、手続きも私が再リクエストしてほしいの意思を示すのみ(つまり「お願いします!」の一言のみ)とのことですので、再度、交渉をお願いしました。
2023年3月中旬
久しぶりにKickstarterのアプリを開いたところProfile欄の「backed」の数が減っていることに気がつきました。15backedだったのに、14backedと表示されている。
慌ててDockmuleのページに行くと、「バッカーじゃない」表記。これは、まさか・・・。
2023年4月12日
電話にて「返金対応を受け付けてもらったので、本日付でカード引き落とし口座に返金しました」旨の電話をいただきました。神や・・・
金額も2022年5月のカード支払い時の明細と比較して1円単位で完全一致。為替レートの影響もなく、完全に引き落とし額と一致しました!
まとめ
Kickstarterのクラウドファンディングで2万円程のドックに投資をし、運良く返金という形を迎えることができたお話でした。去年の今頃はこんなことになるとは思いませんでした。 最初に投資をした日からほぼ1年、希望のドックは手に入れられませんでしたが、お金は戻ってきましたので何よりでした。
人生で初めて、カード会社への異議申し立て(返金の要求)をしました。存在すら知りませんでした。
実際に体験してみたこととしては、客観的な証拠を残しておくことはとても大切ということと、そのような手段があることを知っていることの重要性をしみじみと感じました。 書類が揃っていたとしても、そもそも問い合わせできるということを知らなければスタートラインに立てないのですから。
そしてなにより、クレジットカード会社の方は親身になっていただきました。本当に消費者の味方ですね。ヨドバシゴールドポイントカードプラスのみなさま、ありがとうございます。
今後、まったくもってKickstarterに投資をしない・・・とは言い切れませんが、細心の注意を払ってしていきたいと思います。(もしかしたら今回の件でKickstarterに嫌われたかもしれませんし笑